経済、社会、政治に関する言説は、自分に無関係ではないけど、それらに関する知識がないと生活ができなくなるというほどのものではないため、正しい理解をするための作業はコストが高くつくからみんなやらない。でも、言説の正否をチェックする簡便な(低コストな)技法を身につけておくことで、「ダメな議論」を除外することができる。そうすれば、残りは有用なものである可能性が高くなる(この「可能性が高くなる」という表現が正確で良い)、という考えに基づいて五つのチェック項目を提示し、それらを使ってありがちな言説(犯罪件数の増加、ニート=だらしのない若者が増えた、日本は国際競争力が低下している)を検討していく、なかなか「使える」新書。定義をきちんとさせる、反証不可能な主張はとりあわないなどがチェックポイントで、あたりまえに思えることばかりだが、そのあたりまえの手続きを踏むだけでクズを見抜けるということで、これは逆に言えば、われわれがいかに「なんとなく」で理解しているか、あるいは言説を提供する側がいかに杜撰な論理展開をしているかということを意味しているのだろう。